本記事では、度々質問をいただいていた「独自チェーン」の意味について解説していきます。以前の記事で紹介した「独自コントラクト」と言葉は似ていますが、意味は全く異なるのでご注意ください。
「独自コントラクト」の意味については、こちらの記事をご参考にして下さい。
- 独自チェーンとは?
- 独自チェーンを使用している代表的なマーケットプレイス
- 独自チェーンのメリット
- 独自チェーンのデメリット
- しっかり仕組みを理解した上で使用しましょう
- いかがでしたでしょうか?
- LINEオープンチャットの新設のお知らせ
独自チェーンとは?
独自チェーンとは、簡単に説明すると「イーサリアムブロックチェーン」や「ポリゴンブロックチェーン」等のような、グローバル規模で取引されている仮想通貨を使用した従来のブロックチェーンとは異なり、独自発行した仮想通貨をネイティブトークンとして使用する独自開発されたブロックチェーンのことを指します。
まだ今一つ理解ができない、という方に向けて例を一つ挙げてみます。例えば、私が「SAGAMI Coin」なる仮想通貨を開発し、その仮想通貨を使用して取引がされるブロックチェーンを新たに構築して「SAGAMIブロックチェーン」と呼ぶことにしたとします。この場合、この「SAGAMIブロックチェーン」はまさしく独自チェーンということになります。
独自チェーンを使用している代表的なマーケットプレイス
ご存知の方も多いと思いますが、OpenseaやFoundationといった有名どころのグローバルマーケットプレイスは全て、イーサリアムブロックチェーン等の従来チェーンを使用しています。では、どのようなマーケットプレイスが独自チェーンを使用しているのでしょうか?
実は、LINE NFT マーケットなどの国内マーケットプレイスが主に独自チェーンを使用しています。LINE BITMAX Wallet上で実装されているLINE NFTマーケットでは、LINEが発行する独自仮想通貨「LINK」によって取引がされます。また今春予定されている参入が話題を呼んでいる楽天のRakuten NFTマーケットプレイスについても、楽天の独自仮想通貨による独自チェーンでの提供が発表されています。
他にも、RAKUZA MARKET PLACE(楽座)というアニメや漫画に特化した国内マーケットプレイスはNBNG(ノブナガ)トークンという仮想通貨による独自チェーンで運営されており、また「ファンアイテム」のNFTの売買に特化したマーケットプレイスであるFan Topなど、多くの国内マーケットプレイスが独自チェーンを使用しています。
独自チェーンのメリット
では、なぜこのように多くのマーケットプレイスが独自チェーンを使用してサービス展開しているのでしょうか?メリットデメリットを考えていきましょう。
メリット1:日本円で決済ができる
独自チェーンを使用した国内マーケットプレイスの一番の強みはおそらく日本円決済でしょう。独自チェーン・独自通貨を使用する場合、既に自社で提供している決済システムと連携して開発することが可能なため、クレジットカード払いや自社ポイント払いなど、利用者が仮想通貨を使用しない形での取引が容易になります。
購入者だけでなく、出品者も手数料(ガス代)を日本円で払えるマーケットプレイスが多いため、と仮想通貨に対して抵抗あるアーティストにとっては敷居が低く感じられるかもしれませんね。
メリット2:日本語対応しているマーケットプレイスが多い
独自チェーンそのもののメリットではないですが、独自チェーンを使用したサービスは国内事業者に多く、そのため日本語対応しているサービスがほとんどです。
NFTを売り出すための障壁として、ウェブサイトがすべて英語になっていることが度々挙げられますが、日本語対応しているマーケットプレイスであれば、英語が苦手な方も安心して使用できますね。
メリット3(事業者側):ガス代を自社内で収益化できる
これはユーザーではなく、マーケットプレイスを運営している事業者にとってのメリットです。イーサリアムブロックチェーン等の既存チェーンを使用する場合、NFTを作成するにあたりガス代を支払う必要があります。このガス代は、本来マーケットプレイス提供者ではなく、世界に散らばっているブロックチェーンエンジニアの方々に支払われることになります。
ですが、独自チェーンを使用することで、エンジニアを社内だけで抱えた場合はどうでしょう?これらのガス代も余すことなく会社の財布に入って行きますね!
メリット4(事業者側):利用者の囲い込みができる
事業者側のメリットとしてもう一つ。独自チェーンを使用することで、利用者を囲い込むことができる機運が上がる、という点も挙げておきましょう。
例えば、LINE NFTマーケットを使用するためには、LINEアカウントとLINE BITMAXウォレットを使用する必要があります。同様に、Rakuten NFTサービスも楽天ウォレット株式会社により運営がされる予定で、Rakuten IDへの紐づけや、楽天ポイントとの連携も構想されています。これにより、ユーザーがGMOコインやDMM Bitcoinなどの他社ウォレットを使用することなく、自社のウォレットや付随サービスを利用してくれる囲い込みが期待できる、という訳になります。
独自チェーンのデメリット
さて、ユーザーにもサービス提供者にもメリットがたくさんあるように思える独自チェーンですが、実は大きなデメリットもあります。
デメリット1:二次流通が困難
第一に、独自チェーンを使用したマーケットプレイスで購入したNFTは、同一チェーンマーケット上でしか再販売を行うことができないという点です。イーサリアムブロックチェーンで購入したNFTは、仮想通貨の種類(厳密にはERC-721やERC-1155等のトークン規格)さえ合っていれば、マーケットを超えて転売することが可能です。例えばFoundationで購入したNFTをOpenseaで販売し、さらにその購入者がRaribleで販売する・・・なんてことも可能ですよね。
それに対し、例えばLINE NFTマーケットで購入したNFTを再販売したい場合、現時点でLINK(LINEの独自仮想通貨)に対応したマーケットは他にはないため、LINE NFTマーケット上でしか売ることができません。NFTは本来次々に転売されることで、制作者にロイヤリティが入って行くシステムですが、独自チェーンだとロイヤリティを受けられる機会が減ってしまう可能性がありますね。
デメリット2:市場規模が極端に小さい
二次流通の話と関連して、もう一点。独自チェーンを使用してNFTを出品した場合、そのNFTを買うことができるのは同じ独自チェーンを使用しているユーザーに限られます。そのため、従来ブロックチェーンを使用したマーケットプレイスと比べると、市場規模が圧倒的に小さく、その分コレクターも少ないということが言えます。イーサリアムブロックチェーンを使用しているNFTコレクターが世界に何百万人、何千万人といるのに対し、各独自チェーンの利用人口は世界に一体何人いるのでしょうか?
極端な例として、もう一度「SAGAMI Coin」を持ち出しましょう。私が例えば「SAGAMI Coinを使用したSAGAMIチェーンNFTマーケットなら、ガス代たったの100円!」と宣伝していたとしても、きっと誰もNFTを出品してくれません。だって、SAGAMI チェーンを利用しているNFTコレクターは世界に一人もいないですから。。
また独自チェーンそのもののデメリットではないですが、日本国内向けに日本語で展開しているNFTサービスは、そもそもグローバルマーケットと比較して市場規模が非常に小さく、コレクター人口も圧倒的に少ないということを知っておきましょう。国内サービスとクローバルサービスの主な違いについては、別途記事を執筆する予定です。
デメリット3:コントラクト情報が開示されておらず、NFTの所在が不透明なサービスが多い
NFTを取引する上で致命的なデメリットなのですが、いくつかの独自チェーンマーケットではコントラクト情報が一切開示されておらず、NFTの作成者や購入者、現在の所有者などの取引履歴が外部から確認できないケースがありました。
Etherscan.io上で全取引が記録されているイーサリアムブロックチェーンに代表するように、本来NFTは誰もがそのコントラクトアドレスを見ることができ、現在誰が所有しているのか、等といった情報を常に確認することができる仕様になっています。この透明性により、NFTの価値や所有権が客観的に担保され、それぞれのNFTをただのデジタルデータではなく唯一無二のトークンとして意味づけています。
ところが、このコントラクトアドレスが公表されていないとなると、本当に所有権が購入者に移ったのか、等といった情報を本人以外が知る由がありません。コピーもいくらでもできてしまいます。これではせっかくお金を出してNFTを買う意味が無いですよね。
ちなみに中には、「NFT」と称しつつも作品データをブロックチェーンに紐づけず、一切のコントラクトを発生させずに、ただデジタルデータの伝達をしているだけのマーケットプレイスもありました。独自チェーンのサービスを使用する場合は、予めどのようにしてNFTの非代替性が担保されるか、問い合わせてから使用することをお勧めします。
しっかり仕組みを理解した上で使用しましょう
さて、長々と述べてきましたが、独自チェーンを用いたサービスには、メリットもデメリットもあります。大切なのは、「何となく日本の会社だから」等といった安易な気持ちで使用するのではなく、しっかり仕組みを理解した上で使用することです。
先述の、アニメや漫画に特化したマーケットプレイス等、例えばマーケット規模が小さくてもこの分「濃いファン層」が集まってくるマーケットもあります。自分の得意ジャンルとマーケットプレイスの方向が合致した場合、これらのマーケットプレイスを使用することはとても素晴らしいアイデアだと思います。
また、LINEや楽天などのポイントを日ごろから重宝しており、NFT活動を通じてポイント還元を受けることで、トータルで見たときにプラスになる、といった理由でこれらの独自チェーンマーケットプレイスを使用することも、大変有効な考え方だと思います。
ただ、何となく英語が苦手だから、仮想通貨が苦手だから、等という理由でよくわからないまま独自チェーンマーケットプレイスへ登録するくらいなら、代行サービスを使用してでも著名なグローバルマーケットプレイスへ挑戦したほうが良いでしょう。
いかがでしたでしょうか?
今回は、独自チェーンの意味や、独自チェーンを使用したマーケットプレイスのメリット、デメリットについて説明をしました。今回説明の中に出てきたマーケット以外にも、たくさん魅力的なマーケットプレイスが日本にはあります。
皆さまが使用しているマーケットや、気になっているマーケットの中に、従来チェーンか、独自チェーンか、どちらか不明なものがありましたら、コメント等でお気軽にご質問ください!
LINEオープンチャットの新設のお知らせ
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